SDGsに取り組む

宮坂 力教授が開発『ペロブスカイト太陽電池』とは?

ペロブスカイト

宮坂 力教授により開発された『ペロブスカイト太陽電池』が脚光を浴びています。

危機的な世界の自然環境

近年の世界は、気温が上昇をし始め、北極の氷は解け、大雨の頻度は増加して、以前では考えられないくらいの雨が降ります。季節外れの台風やハリケーンが深刻な被害を及ぼしています。その原因の多くは、二酸化炭素による温室効果です。

太陽光発電(二酸化炭素排出削減)

その二酸化炭素をゼロにする必要性から世界各国で『カーボンニュートラル』を合言葉に各国で二酸化炭素排出量をゼロにすることを目的とした新たな発見や発明があります。

その一つがペロブスカイト太陽電池です。従来の結晶シリコン太陽電池より安いコストで作ることが出来て、プラスチックを土台としているため、曲線構造物にも対応しています。

曲線

宮坂研究室より

また土台に透明プラスチックを使用すれば太陽光発電と室内蛍光灯による発電が可能となるため、建物丸ごと太陽発電パネルにすることが出来ます。

ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池に焦点を当てて、説明したいと思います。

ペロブスカイトとは、聞きなれない言葉ですが、これは、ロシアの科学者がレフ ペロブスキーが発見した結晶構造を利用した太陽電池であるため、ペロブスキーにちなんでこの名前が付けられています。

立方晶系科学技術振興機構より

立方晶構造を基本とした構造です。結晶構造には7種類存在しますが、その中でもっとも対称性の高い結晶構造です。

ペロブスカイト模型

科学技術振興機構より

ペロブスカイト太陽光電池は、印刷技術で製造できるため低価格で作れます。また、低毒素の元素を利用して作ることができますので、地球にも人間にも安全です。

この画期的なペロブスカイト太陽電池を最初に提案したのが宮坂力教授です。2009年に提案された太陽電池は世界的に注目を集めています。

ペロブスカイト太陽電池には鉛も使用されているため、鉛を使用しないペロブスカイト太陽電池の開発も進められています。開発当時の発電効率は3%と低い状態でしたが、現在では20%を超えシリコンパネルを超える勢いです。

シリコンパネルのデメリットとは?

現在、主に使用されている太陽光発電パネルはシリコンの結晶を利用しています。シリコン結晶には高い純度が求められ、原料コストがかかります。また、製造にも多くの時間と技術が必要となるため、ここでも多くのコストを必要とします。

太陽光を効率よく電気に変換するためには、シリコンを厚くする必要性から、パネル作成が高価になります。

耐久性を上げるためにガラスやアルミで保護するためパネルが重くなります。また、形を変えることが難しいため設置場所も限られます。

今後の問題として挙げられることの一つが、環境問題です。シリコンパネル太陽電池には鉛が使用されており、火災や廃棄時に環境汚染を引き起こす恐れがあります。

半導体とは何ですか?

物質には電気を通す『導体』と電気を通さない『絶縁体』とがあり、『絶縁体』は『不導体』とも呼びます。その中間にあるものを『半導体』と呼びます。

半導体とは、高温にするなどの条件を与えると電気が流れるものを呼びます。代表的な半導体には、『シリコンやゲルマニウム』があります

導体の代表的な物質として『銅、鉄、アルミニウム』など、『絶縁体』の代表的な物質として『ガラス、ゴム、セラミックス』などがあります。

導体と絶縁体とは何ですか?

物質は原子から出来ています。その原子は、原子核とその周りをまわる電子からできています。

原子核は、陽子と中性子でできており、陽子と電子が引き合ってつり合いがとれています。その力をクーロン力と呼びます。

その電子が移動し易い物質を『導体』と呼び、移動しにくい物質を『絶縁体』と呼びます。

原子

陽光パネルの原理は?

n型半導体』と『p型半導体』を組み合わせて太陽光パネルは出来ています。

シリコン(ケイ素の結晶)に少しのリンを加えた『n型半導体』と少しのホウ素を加えた『p型半導体』を貼り合わせたものです。シリコン(ケイ素の結晶)に少しの不純物を加え、余分な自由電子と正孔を作りだします。

太陽光が当たると電子はn型半導体の方に、正孔はp型半導体の方に向かって移動するため、電気が流れた状態を作りだすことができます。

最後に

現在主に使用されているシリコンパネル太陽電池は、高価で設置環境にも制限されるため、より安く、設置し易いペロブスカイト太陽電池の開発が急がれます。

製造工程も簡単で、安価に作成でき、発電効率もシリコンに迫る勢いです。現在大型化と耐久性に力を入れて各社開発中です。

また鉛を使用していないペロブスカイト太陽電池の開発も急がれます。