SDGsに取り組む

脱炭素社会の実現へ世界が動き出す。(かんたん概要説明)

脱炭素

今、真剣に議論しないと地球は滅びる。人類、動物、植物、生物がこの地球から、いなくなる日が近づいている。

明るい地球

近年の異常気象

近年の異常気象には、驚きを隠せない。『地球はここまできたのか?』そう思うことが幾つもあります。

温暖化による海面上昇、偏西風蛇行による異常気象など数えきれません。

その一つが山火事です。ギリシャやフランス、米国などでは山火事がおさまりません。世界各地に激しい山火事が広がっています。毎年起きる山火事とは規模も期間も違い異常に大きく長く続きます。

日本においても異常気象による影響はいたる所で見られます。夏の長雨による洪水や土砂崩れ、例年と違った時期に接近する台風など温暖化による影響です。

世界の温室効果ガスの現状

中国の研究チームが『Frontiers in Sustainable Cities』に、世界各都市の温暖化ガス排出量を発表しました。

ワースト25都市

ワースト25都市で、都市全体の温暖化ガス排出量の52%を占めています。

ワースト25都市の内で、23都市が中国、7位にロシア・モスクワ、17位に日本・東京が入っています。

10位までの都市は以下の通り

  • 1位 中国・邯鄲
  • 2位 中国・上海
  • 3位 中国・蘇州
  • 4位 中国・大連
  • 5位 中国・北京
  • 6位 中国・天津
  • 7位 ロシア・モスクワ
  • 8位 中国・武漢
  • 9位 中国・青島
  • 10位 中国・重慶

中国以外にも多くの発展途上国が上位に入っています。労働力の安い地域に生産を依頼しているためと考えられます。

yahoo ニュースより

 

脱炭素化に向けた世界の流れ

1992年に国連で、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスを減らす目的の気象変動枠組条約が採択されました。二酸化炭素排出削減に向けた協議の開始です。

1997年に各国の政府関係者が集まり3回目の気象変動枠組条約会議が行われました。

先進国を中心に厳しい目標が制定されましたが、多くの排出元である発展途上国には、削減義務を求めない約束でした。

2015年世界の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えたいとする国際的な枠組みである『パリ協定』が採択されました。

2017年に米国トランプ大統領は『パリ協定』からの脱退を表明して、2020年に正式に脱退しました。

2019年の温室効果ガスの排出量は過去最大となり、今世紀末までには、平均気温は3度上昇すると予測されています。(国連環境計画(UNEP)の報告書)

2021年、バイデン政権樹立により離脱していた『パリ協定』に米国が復帰しました。

この復帰により世界各国の脱炭素化への取り組みが本格化しました。その記念すべき年が2021年です。

風力発電

世界各国の取り組み

4月にサミットを開いて温室効果ガスの高い削減目標をせまったことが評価されました。

米国は2030年までに05年比で50~52%に削減割合を引き上げ、英国は2035年までに1990年比で78%減らす予定です。

日本でも2030年度の目標として2013年度に比べ46%減らすとしています。

中国は国連総会で2060年までにカーボンゼロを目指す新たな目標を発表しました。

いずれの国も世界の気温上昇を抑えるために力を入れ始めました。

二酸化炭素の排出を実質ゼロとは,

各国において排出する二酸化炭素をゼロにするのではなく、二酸化炭素を消費する取り組み樹木の光合成による二酸化炭素の削減分を引くことにより排出される二酸化炭素をゼロにすることを実質ゼロとしています。

新たな産業の創成と雇用の創出

各国の削減目標は簡単なものではありませんが、この温室効果ガスの削減を逆手にとって、新たな産業の育成を狙っています。

米国では、『米国雇用計画』として、環境関連分野を含むインフラ投資に2021年~2028年で2兆ドル投じます。

EUでは、環境関連分野に5,400億ユーロ投資します。英国では、2030年までに洋上風力発電や水素エネルギーなどの10分野に120億英国ポンドを投資します。

中国では2021年~2025年に電気自動車の充電設備を含む新型インフラに10.6兆中国元を投資します。

日本でも脱炭素のための技術支援に2021年~2030年に2兆円規模の支援を行います。

脱炭素の取り組みは、各国で始まり、世界の3分の2にあたる125の国と地域が温暖化ガスの実質ゼロを表明しています。

世界各国で脱炭素による新たな技術が開発され世界知的所有権機関への登録が行われていますが、日本の脱炭素の特許出願数は非常に多く群を抜いています。

世界における脱炭素を達成するための技術

世界各国では、脱炭素社会実現のために新たな産業や技術が開発され、また過去の技術が見直されています。

発電分野では、水素を利用した発電や太陽光発電、風力発電(洋上、陸上)、アンモニア発電・アンモニア輸送があります。

アンモニア発電とは

アンモニアは燃やしても二酸化炭素は出ません。そこで化石燃料にアンモニアを混ぜて使用します。徐々にアンモニアの比率を増やして最終的にアンモニアを燃やしてエネルギーを作ろうと考えています。

アンモニア輸送とは

水素の輸送手段としてアンモニア(NH3)の形を利用します。

アンモニアは製造や輸送、貯蔵の方法が確立されているため、その既存の設備やノウハウが利用できます。

アンモニア輸送の他にトルエンと水素を反応させ、MCH(メチルシクロヘキサン)として輸送する方法があります。

発電関連分野では、CCUSやスマートグリッド、燃料分野ではメタネーションや電気自動車、燃料電池車などがあります。アンモニアの利用も考えられています。

メタネーションとは

水素と二酸化炭素を使ってメタンガスを合成する技術をメタネーションと言います。

水素と合成する二酸化炭素は『CCUS』によって得たリサイクル二酸化炭素であるため、メタネーション技術は脱炭素の有望な技術です。

『CCUS』とは下記で説明をしています。

スマートグリッドとは

従来は送電線を利用して発電所から家庭や企業に電気を送っていますが、このスマートグリッドとは、IT技術(情報技術)を利用して電力側と家庭企業側の双方向で電気を流すことが出来る技術です。日本語で「次世代送電網」とも呼ばれます。

企業側の電気使用量に応じて供給電力の大小が調整できるほか、家庭や企業で作った再生エネルギーを他の企業や家庭で使用できるメリットがあります。

スマートグリッドは、環境問題と経済問題を解決する手段として期待されています。

その他、住宅・ビル・航空機・船舶、企業・工場などでゼロエミッションの取り組みが行われています。

ゼロエミッションとは

国連大学が1994年に提唱した用語で、全ての廃棄物を原材料として活用し、廃棄物をゼロにする循環型社会のことを言います。

温暖化対策の有効な手段として期待されているのが『CCUS』と『水素燃料』です。

夢の技術『CCUS』二酸化炭素の回収・利用・貯蔵

それでは『CCUS』について説明します。『CCUS』とは、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、二酸化炭素回収・貯留してそのCO2利用しようというものです。

発電所や工場から排出される二酸化炭素を集めて地下深くに貯蔵したり水素などと反応させて燃料や化学原料、コンクリートを作るなどの二酸化炭素の削減方法の一つです。

素晴らしいCCUSですが、メタンを利用して製品を作る場合の7~9倍のコストがかかります。コンクリート製造でも3~5倍のコストがかかりますのでそのコスト削減がカギとなります。

これらを夢の技術として、米国、EUでは優先的に商業化を目指しています。

地球

日本の脱炭素の取り組み

日本国内から排出される温室効果ガスの8割が、企業や公共施設から出されています。

その多くの温室効果ガスを排出している企業がカーボンニュートラルを企業テーマとして、新たな産業を作り出そうとしています。

カーボンニュートラルの実現を経営目標に加える企業は、日経平均採用銘柄の40%、85社が目標と定めています

それでは、日本ではどんな取り組みがされているでしょうか。

日本企業の取り組み

トヨタ自動車や本田では、以前からハイブリッド自動車の生産には力を入れていますが、ここ数年前より水素を利用した自動車の生産が始まっています。また、日産自動車では、電気自動車を販売しています。

ソニーグループでは、全世界にあるソニーの会社で使う電力を再生可能エネルギー由来に変える取り組みを行っています。また部品などの調達先企業や委託先に排出削減を求めています。

キリンホールディングスでは、温室効果ガスの排出をゼロにするために、太陽光発電に転換するように動いています。2050年には実質ゼロを目指しています。

ユニクロではヨーロッパにあるユニクロ60店舗、再生可能エネルギーへの切り替えを完了しています。日本でも環境が整えば、導入していく予定としています。

パナソニックでは、基盤の上に印刷するだけで簡単に制作できるペロブスカイト太陽電池の開発が進んでいます。建物の曲線部分や壁などにも利用できる薄型太陽電池を売り出そうとしています。

ペロブスカイト太陽電池とは

聞き慣れない最新技術に『ペロブスカイト太陽電池』があります。新たな技術を用いた太陽光発電パネルです。低コストで薄く作れるため、どんな場所にも設置出来ます。現在主流の結晶シリコン太陽電池よりも安く、土台をプラスチックで作れますから曲線構造物にも対応できます。

ペロブスカイト型太陽電池の開発

清水建設では、安全な水素貯蔵技術として燃えない水素吸蔵合金の開発に成功しました。水素吸蔵・放出を繰返した後でも着火せず、消防法危険物非該当な合金です(認証取得)。(9/16:NHKで放送)

多くの企業では企業独自の方法で温室効果ガスの削減に動いています。2050年までにカーボンニュートラルの実現を計画しています。

夢の燃料『水素』を利用する

夢の燃料として期待されるのが水素です。元素としては地球上には一番多く、単体としての存在ではなく化合物として存在します。

その水素を燃やすことによって大きなエネルギーを得ることが出来て二酸化炭素を発生させないため『夢の燃料』と言われています。

水素の良さは燃やした時の発熱効率も高く、炭素と比べると3.5倍以上の発熱効率です。

しかし水素の利用にあたっては『作る』『運ぶ』『貯める』『売る』『使う』を連動させることが大切です。

脱炭素社会を実現するには、再生可能エネルギーを利用しなければなりませんが、その優等生が水素です。その水素にも精製方法によって、呼び名が付いていますので、次に説明を行います。

水素を貯める技術

固体に吸着させた水素吸蔵合金として貯めておく方法があります。液体水素より圧縮できますので体積を小さくできますが、重量は重く輸送には適しません。よって貯蔵に特化した技術です。さらに体積を小さく、軽い金属を求めて研究が進んでいます。

水素の製造方法

水素は、精製方法によって呼び名があります。グリーン水素ブルー水素グレー水素イエロー水素に分かれます。

グリーン水素

グリーン水素とは、水から水素を作る方法として水を電気分解します。水素と酸素が作られ、酸素は大気中に放出したり、酸素として使用します。

水を電気分解するためには、多くの電気を使いますが、その電気が再生エネルギーである場合をグリーン水素と呼びます。

水素を作る過程において、二酸化炭素と全く関わらない方法です。

地球たち

ブルー水素

ブルー水素とは、天然ガスや石炭等の化石燃料を原料としています。

精製方法にはいろいろありますが、水素と二酸化炭素に分解され、副産物の二酸化炭素を回収しますので大気中への放出はありません。

回収した二酸化炭素は再利用されます。

グレー水素

水素を作る過程はブルー水素と同様ですが、副産物である二酸化炭素の扱いが違います。

ブルー水素は二酸化炭素を回収するのに対して、グレー水素は大気中に放出します。

現在水素精製の95%はこの方法であり、温暖化防止には、寄与していません。温暖化防止の観点から言えば、禁止されるべき製造方法です。

イエロー水素

イエロー水素はグリーン水素と同様に水の電気分解によって生産されますが、精製に利用する電気は原子力発電で作り出された電気を利用しています。

原子力発電と言えば、二酸化炭素は出ませんが、副産物として核廃棄物が出来てしまいます。

グリーン水素とブルー水素の比較

グリーン水素とブルー水素の生産コストを比較した場合、現時点では、ブルー水素が安価ですが、研究が進みグリーン水素の生産コストも抑えられつつあります。

先ず、ブルー水素製造をスタートさせグリーン水素製造へ移行しようと考えられています。

水素の輸送

作られた水素をどのような形で運ぶかが問題となります。液体水素やトルエン、アンモニアなどとして運ぶ・貯める技術、そして個別に売るための技術やその水素を使うための技術が求められます。

まとめ

地球温暖化防止に向けて、世界が一つになって動き始めました。多くの国で削減目標を決めてその計画に沿って動き出しています。

2050年や2060年までにカーボンニュートラルを実現するように期限を決めて動いています。

日本でも多くの企業がカーボンニュートラルを実現しようとしています。カーボンニュートラルの実現を経営目標に加える企業は、日経平均採用銘柄の40%、85社が目標と定めています。

カーボンニュートラルの優等生である水素には製造方法が色々あります。その製造方法によって呼び名があります。グリーン水素、ブルー水素、グレー水素、イエロー水素に分かれます。